先日、金曜ロードショーで火垂るの墓を見た。
今まで5回以上見ているが、コンテンツビジネスを知ってからみると、学びがすごい。
今回は、火垂るの墓という題材から、コンテンツで人の感情を動かすことについて、分析していきたい。
火垂るの墓の感情が動くポイント
火垂るの墓には大きく感情を揺さぶられるシーンがいくつもある。
まずは重要な感情ポイントを挙げていく。
母が亡くなっていることを節子に言えない清太
空襲で怪我をした母親が亡くなったことを知った清太だが、節子にはそのことを隠すと決めている。
骨壷も隠し、自分の悲しみも押し殺す清太。
1人で抱え込む清太の気持ちをどうしても推し量ってしまう。
母の着物を売るのを泣いて嫌がる節子
米を買うために母の着物を売る場面。
清太は乗り気だが、節子は全力で拒む。
「母ちゃんのおべべ売ったらあかん!あかん!」
その後に流れる、親子4人で満開の桜の下で写真屋に写真を撮ってもらった幸せな思い出。
その時の着物を売るなんて許せない、という節子の気持ち。心にくる。
節子が母の死をすでに知っていたという、清太の衝撃
元気に光っていたホタルが死んでしまい、墓を作ってあげる節子。
「お母ちゃんもお墓におるんやろ?」
必死に隠していた母の死をもう節子が知っていたことに、清太の驚きと、押し殺していた悲しみが爆発して清太は大粒の涙を流す。
「母ちゃんの墓に行ってあげような」という清太に対し、
「なんでホタルすぐ死んでしまうん?」と返す節子。
作品の題名が火垂るの墓であるように、見た人に強烈な印象が残るシーン。
畑泥棒で警察の世話になり、清太が泣くシーン
衰弱する節子のために畑を荒らしたり火事場泥棒を繰り返す清太。
しかし捕まり殴られ、警察に突き出される。
釈放された直後の姿を節子に見られ、節子にだけは見られたくない姿を見られてしまい、あまりの惨めさに泣く清太。しかし節子は泥棒をして捕まったことは理解しておらず、清太の体を心配して優しい言葉をかける。そんな節子を抱きしめる清太。
またボコボコの清太を見て優しさを見せる警官も、作品の中で数少ない清太たちに優しさを見せてくれる人物でありぐっとくる。
節子の火葬シーン
懸命の看病も甲斐なく、節子は死ぬ。
元気だった節子の回想シーンと共に流れる挿入歌『Home! Sweet Home!』(日本語訳は、埴生の宿)。
棺桶の蓋を閉める清太。マッチに火をつけ、火種に火を移す瑛太。燃えていく様を、夜になっても微動だにせずただ見ている清太。
清太の表情はほとんど変わらないが、見ている方の感情はかき乱されるようになる、あまりにも辛いシーン。
なぜ感情が揺さぶられるのか。①清太の葛藤
感情が揺さぶられるのは、このあたりではないだろうか。
ここからはなぜ、これらのシーンで感情が揺さぶられてしまうのかを分析する。
まず、火垂るの墓で描かれているのは、とにかく、清太の「葛藤」である。
母の死を節子に明かすわけにいかない清太の葛藤。
容体が悪化していく節子を見ながら必死で泥棒をしてまで食べ物や金を手に入れなければならない清太の葛藤。
清太自身が言葉で辛いとかしんどいとかは一切言わない。
しかし、清太の辛い気持ちや心情が細かく伝わってくる。
なぜ感情が揺さぶられるのか。②行動の背景
見ている人は物語を通じて清太の感情を追うことで、感情が揺さぶられる。
火垂るの墓はやはり清太の話であり、見ている人は擬似的に清太になっているのである。
だからこそ節子が可愛いし、節子が死ぬのが悲しくてしょうがなくなる。
見ている人は清太目線で物語を追うことになる。
コンテンツビジネスでやりたいことはまさにこれで、物語を通じて自分目線になってもらい、感情を揺さぶること。
状況。行動の背景や理由。心の葛藤。
このあたりをしっかり描くことで見ている人に自分目線になってもらい、感情を動かす。
例えば、母の死を見た清太が骨壷を家の外に置き、後で取りに戻るシーンを見れば、清太が必死に母の死を節子に知られないようにする気持ちを感じることができる。
清太が「節子には母ちゃんが死んだことは言えない。隠さなきゃ」と言っているわけではない。
でも行動や状況を見れば、その人の気持ちを推し量ることができる。それが人間。
そこをいわば利用する。
結論を変えてしまう、物語の力
つまり、物語を見せることで、主人公に共感させ、感情を動かす。
これ。
行動の背景と、実際の行動を見ることで、人は共感する。
泥棒をする清太のシーンだけを見たら、とんでもないヤツだとなる。
だが、あのストーリー全体を見て、清太を悪と思う人はいない。
これが物語の力。
結論変わっちゃってんじゃん、って話。とんでもないパワーだ。
行動の背景を描くことがめちゃくちゃ重要。
行動の背景をしっかり描いた上で、主人公が行動している姿を描く。
そうすることで、共感が生まれる。
共感が生まれることで、感情が主人公と一緒に動く。
感情が動くことで、行動する。
もう一度言う。
物語には、結論を変えてしまう力がある。
悪も善になるし、後ろも前になり、ブサメンもイケメンに変わってしまうのだ。
まとめ
火垂るの墓はもう見たくない人も多いと思う。
しかし、それだけ強烈な印象を残すコンテンツだということだし、
実際、感情を動かすコンテンツとして改めて見てみても非常に優れたコンテンツだということがわかる。
清太に共感するのは、感情的な行動と、その行動の背景が丁寧に描写されているから。
母のおべべを売るのに怒り号泣する節子も、その行動の背景である幸せな頃の時間を見せられることで共感してしまう。
もうこれは人間として逃れられない性質なのだろう。
登場人物の感情を伴った行動と、その行動の背景を細かく描写する。
これが人の感情を動かすストーリーの作り方である。
今回は火垂るの墓という素晴らしいコンテンツを通じて、物語の重要性を学んだ。
自身のコンテンツ作りに活かしていきたい。